「国民健康保険って払わないとどうなりますか?」「保険料って安くなりませんか?」というのは、窓口でもめっちゃ多い相談なんです。

「病院なんてほとんど行ったことないのに、なんで健康保険料をこんなに払わないといけないんだ!」
と怒られることもしばしば。。
基本的に国民健康保険に加入される人は、
- 会社を退職したばかりの人やこれから退職予定の人
- 個人事業主や勤務先会社の社会保険に加入できない人(アルバイトなど)
- 家族の扶養には入れない人
などですから、少しでも出費は抑えたいのは当然のことですよね。
というわけで、国民健康保険に加入されている人、退職などでこれから加入しなければならない人向けに、賢く国民健康保険に加入する方法を、役所窓口経験者がわかりやすく丁寧に解説したいと思います。
なるべく制度の仕組みが分かりやすいように、概要を優先して書きたいと思いますので、詳しい保険料の計算や専門用語は避けます。
役所の窓口では、質問されないと説明しない(全部説明できない)ことも多いので、仕組みさえ知っていれば、窓口で相談しやすいと思います。
必要な情報だけ拾い読みしたい方は、目次からばびゅーんとどうぞ(・∀・)
国民健康保険に加入しないことはできる?

結論から言うと、できます。加入していない人もいます。
これで終わってしまうとアレなんで、解説しますねw
日本は、「国民は健康保険に全員加入しましょう」と決まっています。これを「国民皆保険制度」といいますが、勤務先の社会保険(「社会保険」や「社保」といいます)もしくは「国民健康保険」に入ることで、日本の医療保険制度は成り立っています。
そのため、勤務先の社会保険に加入していない人、収入がオーバーするなどの理由で同居人の社保の被扶養者になれない人は、国民健康保険に加入しなければなりません。

え?じゃ、絶対に入らないといけないってことなんじゃ?
ええ、法律的にはそうなんですが例外がありまして。その例外を説明するとですね。
生活保護を受給している人は、生活保護制度から医療扶助を受けられるので、健康保険に加入する必要はありません。
ちなみに、75歳以上の方は、全員が後期高齢者医療制度に切り替わりますので、この場合は国民健康保険にも勤務先の社保に入ることもできません。
いやいや、そういうことじゃねーよ。といわれそうなので、さらに突っ込みます。
法律的には「国民は全員健康保険に加入しないといけない」となっているのですが、実際には誰が社会保険に加入しているかというデーターは一括管理できていません。
※2020年1月現在なので、今後マイナンバーが健康保険証として使えるようになるとどうなるかわかりませんけども。
なので、誰が会社を退職して社保から抜けたとか、収入が増えて配偶者の勤務先の社保扶養から抜けたとかまで把握できませんし、その人がまた別の社保に入るのか、国民健康保険に入るのかもわかりません。(ちなみに生活保護の受給開始はわかります)
国民健康保険って本人が役所の窓口で「いつ(社保から抜けた日)から、国民健康保険に加入する必要ができたから手続きします」って言わないと勝手には入らないんですよね。
すなわち、その手続きを放置している人は、結果的に「国民健康保険に加入していない人」となりますので、事実上は「加入しない」ということができてしまうことになります。
※でも、国民健康保険制度が成り立っているのは保険料が適正に払われているからであって、3割負担で受診できるのもその恩恵なので、きちんと加入することをお勧めしていますよ(・∀・)
国民健康保険料を払わないとどうなるの?

国民健康保険料は、払わなければいずれその資格が使えなくなります。
要するに、病院を受診しても10割負担しなければいけないということになります。
ただし、滞納したからといってすぐに使えなくなるわけではなく、滞納が続くとまずは国民健康保険証の更新時期に、通常の有効期間1年の保険証ではなく、「短期証」という6ヶ月有効の保険証に切り替わります。
そして、通常なら郵送されてくる保険証ですが、「窓口に取りに来なければ渡しません」というスタイルに変わります。保険料を少しでも納めてくれないと渡しませんよーということですね。
この短期証の場合は、病院に受診しても保険が適用されるので窓口負担は3割ですみます。
ここで重要なのですが、それでやっと窓口に来てくれて、保険料の減免の話ができた!というケースが非常に多いんです。
そう、本来なら手続きさえすれば保険料が安くなるのに、まったく連絡が取れないために減免(安くする手続き)ができないという人もかなりの割合でいるのですよ。
それでも窓口に来ない人ももちろんいます。病院に行かないんだから保険証は必要がないということなんでしょうね。
そのまま保険料の未納状態が続くと、最終的には「資格証」に切り替わります。
それってなんじゃらほい?っていうと、国民健康保険の資格はあるだけの証明書って感じですかね。それで病院に行っても保険が適用されません。だって、保険料払ってないんだもの、資格は取り消せないし、仕方ないよねというわけです。

そのまま、ずっと払い続けなかったら一体どうなるんでい?

保険料は滞納状態になったまま、どんどん増えていくよー
もちろん、一生懸命回収を試みるのですが、音信不通の人や手続きしないまま行方不明という人もちらほらいたりします。
でも、保険料の賦課は2年分となっているので、滞納が2年を超えてしまうとそれより前は徴収できなくなってしまいます。
ずっと払い続けないままだと、常に2年分の健康保険料がかかっていくことになってしまいますね。
ちなみにですが、前の項目で書いた「そもそも国民健康保険に加入していない人」については、資格自体が存在しませんので、保険料も賦課されません。
国民健康保険料を安くする方法ってあるの?

国民健康保険料を安くできる方法はいくつかあります。
当てはまる方は、手続きすると保険料が安くなるかもしれないので、参考にしてください(条件等はお住まいの自治体によって異なることがありますので、詳しくは確認してくださいね)。
国民健康保険料は前年度の所得で決まる
国民健康保険料は、前年度の所得で計算されます。複数の勤務先からの給与やそれ以外の所得に対してもかかってきます。ただし、退職所得についてはかかりません。
その他、雇用保険や障害年金、遺族年金などの非課税所得も計算の基礎に含まれません。
40歳以上の方は介護保険料が加算されます。
平等割と均等割は全員が払う必要があり、所得割は所得がある人にだけかかってくることになります。
ということは、所得が多いほど健康保険料も高くなる、というのはなんとなくわかるのですが、所得が低い場合にはどうなのでしょう。
その場合、世帯にかかる平等割と均等割に対してもさらに軽減が受けられます。
(所得額に応じて、保険料の7割、5割、2割の軽減があります)
しかも、これは申請不要で自動的に計算してくれて、保険料が安くなるのです。
ただしこれは、前年度の所得が税情報としてきちんと上がっていることが条件となるのですが、なんらかの事由で所得不明となっている場合には適用されず、保険料が軽減されないままの人が結構な割合で存在します。

税端末から所得情報引っ張ってるのに、なんで不明とかあるねん!と思うかもですが、それはこのような理由があります。
前年度の所得がゼロの人は所得の申告をしましょう!
収入がない、要するに無職の人は、勤務先がその人に払った給与の情報を税務署に申告もしませんので、自分で申告しない限りは所得が不明となります。
住民税は、前年度の収入(所得)がなければ申告の必要はありません。なので、申告せずに放っておくと、国民健康保険の算定をする時には「前年度の所得がわからないから軽減できないや、そのままにしておこう」と判断してしまうのです。
めんどくせーと思うかもしれませんが、非課税世帯の方はこれで国民健康保険料が7割引になると思えば…頑張ってやりましょう。
所得の申告をしておけば、国民年金の減免やその他の自治体のサービス(保育料とか)が受けられることもありますので、しておいて損はないかと。
ちなみに、国民健康保険料を計算する時に、前年度の所得がわからない場合には、国民健康保険だけの所得申告書というのもあります。
「あなたの所得が不明なので申告してくださいねー」という封書が自宅に送られてくることもあります。その場合、「送り返したら保険料が高くなるかも」と思わずに、返送する方が安くなることもありますので、わからなければ相談してくださいね。
自治体を越えて引っ越したら、直後は所得がわからない場合も
例えば、「今日、東京から大阪に引っ越してきたので、健康保険の手続きもしました」という場合には、税情報は東京にあるのですぐにはわかりません。
この場合も、一定額以下の収入の場合には申告した方が、保険料が特になる場合もありますよ。
失業したばかりの人は減免措置があるかも
国民健康保険に加入する人の多くは、会社を退職したからという方が多いです。
失業してすぐは収入がないことも…しかし、国民健康保険料は前年度の所得で決まるということは「めっちゃ高いやん!こんなん払えるかー」と怒られることもしばしば(2回目)
自治体によっては、失業減免制度があります。
失業したことがわかる書類(退職証明書や離職票、雇用保険受給資格証など)を持参して、窓口で相談してみましょう。
自治体によって制度が異なる場合もあり、必要書類が異なることもあります。前年度よりも大幅に収入が減ったということを証明すれば、失業ではなくても減額が受けられる場合もあります。
わたしがいた自治体では失業減免があったので、加入の手続きに行く時には失業中であることを告げて質問してみましょう。
国民健康保険料は世帯主に払う義務がある、という謎のきまり
国民健康保険は世帯主が世帯員の保険料を払う義務があります。
例え、世帯主は社会保険に加入していたとしても、世帯員が国民健康保険に加入すれば、世帯主に対して保険料を払う義務が生じます。
不思議ですよねー?昔の家制度がそのまま残ってるんじゃね?と思うのですが、法律が変わらない以上は仕方ないのですが。
さっきの所得がなければ自動的に軽減される制度は、所得は世帯単位で判断します。

前年度の所得がない(申告済)のに、保険料は軽減されないんやけど?なんで??
と疑問に思った方の多くは、世帯主にそこそこの所得があったりして、いくら本人に所得はなくても軽減はされないというパターンに陥ります。
世帯でそれなりに所得があるんなら軽減する必要ないでしょってことなんですかね。当然、所得割(所得に応じて増える保険料)は増えませんが、減額はしないでいいやろ、と。
- 配偶者がパートやアルバイトを始めて社保の扶養から外れた
- 子どもがアルバイトを始めて社保の扶養から外れた
上記の場合に、起こり得るパターンですが、この時に世帯での軽減措置を復活させる方法があります。
ぶっちゃけ、それなら世帯分離してしまう、という方法です。

そんな…別居なんてしたらえらいことやん!

あ、いやいや。別居するんじゃなくて、同じ住所やけども住民票を分けるってことね。
どういうことかというと、日本人は必ず住んでいる場所(住所)に住民票を置くことが法律で決まっています。
しかし、同じ住所の中に住んでいる人は同一世帯とは限らず、別の世帯が2つあってもそれは構わないことになっています。

原則として、生計は別にしていることが別世帯の概念なので、親世帯と子世帯の二世帯住宅などは、そもそも住民票は別世帯になっていることが多いと思います。
夫婦の場合は、生計を別にしているということはあまり認められません。入籍はしていないけど、同棲している状態ならば認められると思います。
あと子どもなんですが、成人しているような年齢であって、アルバイトでそれなりに稼いでいて、親の扶養からも抜けているようであれば、世帯分離しても問題ないのではないかと思います。
当然、世帯分離をすると、それぞれに対して世帯主としてのいろいろな責任がかかってきます。逆にこれまで世帯主だった人にとっては、保険料支払いの義務からは免れます。
もし、お子さんに「アルバイト代からきちんと健康保険料を払え」と言っていたとしても、滞納すれば世帯主に請求が来ますので、この際世帯分離しちゃうってのもいいかもしれません。
ただし、世帯主が別の制度で世帯員に対して恩恵を受けているようなものがあるならば(例えば、同居する人数によって減額や手当をもらっているとか)、そっちがダメになる可能性もあるので、ちゃんと世帯主と相談してからやりましょうね。
被災した人、勾留中の人は国民健康保険料が一部免除になることも
国民健康保険料は、大規模な災害で家屋が倒壊した場合等に減免制度を設けている自治体があります。
全壊、半壊などで受けられる減免の範囲が異なるようですので、被災証明書などを持参して相談してみてください。
また、国民健康保険加入者が、少年院や刑務所等に勾留された場合にも、国民健康保険料が一部減免となる場合があります。
これらの詳細は、お住まいの自治体にお問い合わせください。
国民健康保険に加入するかどうかぶっちゃけ迷っている人へ

国民健康保険には加入しないといけないよ!という前提ですが、もしも加入手続きしなかったら?という場合のデメリットも知りたい!というのが世の常かと思います。

やるやらないではなく、予備知識として知っておくのは損はないかと。
国民健康保険に加入しなかった場合のデメリット
当然ですが、いざ病気になったり、病院に受診しなければいけなくなった時に、保険の恩恵は受けられません。受診すれば、10割負担することになります。
めっちゃ健康に自信がある場合は乗り切れるかもしれませんが、オススメはしません。

病院に受診したいと思った時点で国民健康保険に加入したらいいのでは?

いい質問やけど…
でもそれをすると保険料めっちゃ払わないといけなくなるんよ
国民健康保険料は未加入期間であっても、最大2年間は遡って賦課できます。受診したい時にもちろん加入はできますし、手続きをした日以降は3割等の負担で受診できますが、過去2年間の国民健康保険料を払うことになります。
ただし、過去2年以内に社会保険に加入していた場合には、資格喪失証明書を持参すれば資格喪失日より加入ができます。(遡っての3割等の負担にはなりません)

健康保険証が確認できないうちは、10割立て替えて支払ってね
健康保険証はその場でもらえないことが多く、後日郵送で届いたものを自宅で受け取る必要があったりします。そのため、受診する日に手続きしても健康保険証は手元になく、一旦10割支払い、領収証を持参して返金を受けなければいけないことがあります。
国民健康保険の加入手続きをする前に受診しちゃった分は、もちろんですが保険適用にはなりません。
「今日受診したから、明日健康保険の手続きすればいいやー」では間に合わないのでご注意を!
国民健康保険に加入しなくても許される場合
国民健康保険料に加入しなくても許される場合なんてあるの?という感じですが、厳密にいうとないんですよ。
しかし、物理的に国民健康保険料に加入せずに済んだり、国民健康保険料が発生しないパターンもあります。
どのような場合かというと、
- 会社を退職してから、ごく短期間で次の社会保険に加入した場合
- 引っ越してきたが、すぐに別の自治体に転居する予定がある場合
このような場合にも、本来は加入の手続きが必要です。ただ、物理的に資格がないままであったり、保険料が発生しないケースもあります。
ただ、放置するのではなく、きちんと手続きしておいた方が良い場合がありますので、これについては別の記事で詳しく説明したいと思います。
国民健康保険を払わないとどうなる?安くなる?(まとめ)

国民健康保険は払わないとどうなる?安くなる?のまとめです
- 原則として社保じゃなければ国民健康保険には加入しなければいけない
- 加入手続きをしないと勝手には国民健康保険に入ったことにならない
- 加入しなかった期間は病院で10割負担、最大2年間保険料を払う必要がある
- 前年度の所得がないのに無申告の人は保険料が7割引になってないかも!
- 世帯主が社保だと所得がなくても軽減されない!それなら世帯分離も検討。
- 失業したり、被災したり、事情があれば減免制度もあるよ
- 受診する日に加入しても健康保険は使える。でも保険料は遡って払うこと!
- 転職や他自治体への転居など、加入期間がごくわずかの場合には保険料が発生しないケースもある
今回の記事は以上となります。
国民健康保険は、知らないと損をしたり、必要な給付が受けられなかったりするので、少しずつ役立つ情報を追加していきたいと思います。
最後までお付き合いくださりありがとうございました(・∀・)♪